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羊飼いの少女が、羊の面倒を見る傍ら、編み物に勤しんでいる様子を描いた作品。広大な原野に生える草花や、羊の毛の一本一本に見られる丹念な仕上げは、ミレーの画力を十分に物語っている。前面に立つ少女の姿は、ミレーの≪晩鐘≫を想起させ、まるで祈りを捧げているかのようである。静かで、どこか神聖な雰囲気も漂う魅力的な作品。
素朴派の代表画家として知られるアンリ・ルソーの作品は、一種幻想的とも言える作風が特徴である。本作品で、画面手前に並ぶ釣り人が立っている川岸は不自然に隆起しているが、恐らくこれは奥行きを示すものだろう。風景が全くの平面として存在しているかのようで、夢を見ているような気分になる一枚。
風景画家として修業をしていく中で、1847年のオランダ滞在をきっかけに、動物画の世界に身を投じ、動物(とりわけ牛)を主題とした絵画作品も数多く手がける。本作にも牛が描かれてはいるが、自然の風景により主眼が置かれ、夕焼け空や、木立、川の水面など、風景画家としてのトロワイヨンの優れた技巧が光る作品。
印象派の巨匠ドガは、舞台の踊り子や、カフェに集う市井の人物を描いた作品で知られる。光(特に人工灯)に照らし出される人々の描写に秀でていた。この肖像画は、彼の画業の比較的初期に制作されたものである。ドガは肖像画をあまり多くは制作しなかった。3/4正面の構図に目新しさは無いものの、クローズアップされた顔の陰影、対象の特徴を捉える巧みさは見事。
ラファエロの≪バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像≫、ティツィアーノの≪男の肖像≫、そしてアルブレヒト・デューラーの≪自画像≫(1498年)に影響を受けたと言われる。この自画像の中でレンブラントは右肘を画面手前の木枠に掛け真っ直ぐにこちらを見据えている。その堂々たるポーズは「熟練」とか「職人」といった語を想起させる。
赤褐色の豊かな髪、そして愛らしい瞳でじっと画面左手を見つめる少女の顔立ちはとても端正で、見る者を惹きつける。幼さを残しつつも、凛とした居住まいからは、大人の女性の持つ風格さえ漂う。少女の内面までも見透かせるようなこの作品は、印象派に対して持つイメージとはいささか異なった印象を受けるが、魅力の多い作品である。
リュートを弾く道化師を描いた躍動的な作品。17世紀オランダ絵画黄金期の画家であるハルスは、カラヴァッジォ派の影響を受け、人物の表情を自然な描写で描く画法を確立。一瞬の表情を巧みに描き出し、躍動感をもたせた風俗的な主題の本作は、人物の表情に見る表現の秀逸さもさることながら、絵画全体の持つ雰囲気が非常に心地いい作品である。
数ある西洋絵画の中でも最もよく知られている作品と言えるだろう。しかし、最新の科学技術による研究、そして歴史的考察などをもってしてもなお、モデルの特定には至っていない。ダ・ヴィンチが用いたぼかし技法による丹念な仕上げ、女性の肉体や衣類表現など、ダ・ヴィンチが最後まで手元に置いていたというのが頷けるほど、肖像画として完成度が高い。
海辺で初老の男性が、二人の少年に熱心に話をしている。漁の話か、それとも海を越えた遠い異国の地の話か。いずれにしろ、二人の少年は話自体にはあまり関心がないように見える。題にある「ローレイ」とは16世紀イギリスの冒険家のこと。画面左手前に置かれた船の模型が、未来の冒険家となる少年の行く末を暗示しているかのようである。
一見してスッと作品に入り込めてしまえるほど、この作品の画面構成は非常に単純化されている。道の両脇にある木の頂点、手前から奥へと伸びる一本道、地平線、これらを結ぶと、線遠近法による画面構成が現れる。鑑賞の際は、立った時の目の位置に、絵の消失点が来るように絵を掛けるのがいいかもしれない。
ベラスケスが17世紀スペイン最大の画家と言われるのが頷ける一枚。少女の幼い顔立ち、丸みを帯びた体、ゆったりとウェーブのかかった髪、少女の身を包むドレス、そして、画面左の台に置かれた花瓶と花、細部の表現から全体の構成まで隙がなく、思わず嘆息してしまうほどの作品。絵全体の持つふんわりとした雰囲気は、見ていると気持ちが柔らかくなってくる。
静物画といえば、スルバランの絵に代表されるような真に迫ったリアリティあふれる絵画を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、この作品で目を惹くのは、その鮮やかな色彩だろう。右側で大きく隆起する少し硬質な印象の布、皿に盛られたリンゴ、背景の大部分を占めるタンスなど、静物でありながら、各々の内包するエネルギーが観る者に直に伝わってくるような作品である。
単に少女を生のままに描くのではなく、ここでは少女は小動物を優しく包み込み、柔らかい微笑を湛えている。どことなく聖母マリアに対する時のような気持ちになる。少女の顔を真正面から捉えてなお、鼻や顔の造作の特徴をしっかりと描ききっているのは、画家の力量のなせる技だろう。少女のふっくらとした体つきはそのまま絵全体の雰囲気にまで及び、静かで温かい気持ちになる。
セザンヌは当時、労働者階級に興味を持ち、そうした人々をモデルに、カード遊びに興じる様を何点か作品にしている。やや斜めに傾いだ構図で描かれている本作は、全体的に色彩の多用が避けられ、落ち着いた雰囲気である。日常の瞬間を切り取ったというよりかはむしろ、永遠に続くカード遊びがそこに展開されているような雰囲気の作品である。
この作品における人物描写には、1500年にデューラーが描いた≪自画像≫に対した時のような緊張感が感じられる。無論、この作品でモデルはこちらに体を向けてじっと見つめてきているわけではない。しかし背景の4/5ほどを赤が占め、モデルの目つきは眼光鋭く、固く握られた左手などからは、単に肖像画のモデルとしてそこに存在している以上の物語性が感じられる。